いい絵本み〜つけた!!

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「有名な昔話・すばらしい児童文学≠すばらしい絵本」

 誰でも知っている有名な昔話(民話)、あるいはすばらしい児童文学であるといっても、それによって「すばらしい絵本になるか?」と問われると実はそうでもありません。
 「誰でも知っている話」ということは、聞いた(読んだ)人それぞれが思い浮かべる映像があるということであり、いざ「絵本」にしてみると、どうしても「個々人が思い浮かべる原作のイメージが超えられない」という事態が起こりやすくなってくるからです。
 今回は特別編として、「原作は知っているけど、『絵本』となると、誰の絵本かなぁ?」というような「作品」を紹介します。
 もちろん絵本化されてないわけではなく、むしろ多すぎてどれを手にしようか迷うくらいなので、これを機会に自分のお気に入りの絵本を探してみるのもよいと思います。

※ 今回紹介「作品」は一覧表に掲載しません。


宮沢賢治さんの作品

 「作品」がテキスト(文)だけで既に完成しているためか、「絵本化」が難しい作家の
1人(と言うより「代表」)です。
 紹介済みの絵本としては『よだかのほし』(6)があります。
 下記の他、絵本化されている作品として『風の又三郎』『銀河鉄道の夜』『猫の事務所』『鹿踊りのはじまり』更には詩の『アメニモマケズ』などたくさんありますが、絵本化と同じく、紹介や解説も難しい作家でもありますので、勝手ながら3作にとどめさせていただきました。
 何度読んでも、何時読んでも、作者である宮沢賢治さん同様「得体が知れない(としか言いようのない)ほど透き通った魅力」がある作品ばかりですので、是非「原作」、「絵本」であれば、自分(読む人)が納得した絵柄で、少なくとも内容が割愛されておらず、言葉遣いも改められていないものを選んで、子どもとともにふれたいものです。

やまなし
            読み聞かせるなら  9・10才〜
            自分で楽しむなら   10・11才〜おとなまで

  クラムボンは かぷかぷ わらったよ
     ※ 「クラムボン」は宮沢賢治さんの造語。一般的には泡のようなものと考えられているが、      確証はない。
 など、宮沢賢治さん独特の造語・擬音語・擬態語が幻想的な雰囲気を醸し出している作品です。
  二匹のカニの兄弟と、お父さんガニの3匹が水の中の世界で織りなす物語が、ぼんやりと付いては消える幻灯のように、淡い筆致で描かれている作品です。

注文の多い料理店
             読み聞かせるなら  8・9才〜
             自分で楽しむには  10・11才〜おとなまで

 宮沢賢治さんにしては珍しく、ブラックユーモアと風刺、そして言葉遊びを取り入れた比較的分かりやすい絵本。
 とは言え、
   すぐ食べ
られます
   
注文の多い
 という(どちらかと言えばありがちな)言葉遊びを不思議な森の中の幻想的な雰囲気の中に隠し、通俗的な雰囲気を全く与えないのはさすがです。
 宮沢賢治さんが生前発表した唯一の童話集の表題作です。

セロひきのゴーシュ
            読み聞かせるなら  8・9才〜
            自分で楽しむなら   10・11才〜おとなまで

 ゴーシュは町の活動写真館でセロを弾く係でした。ですがあまり上手ではなく、楽団からお荷物扱いされ、楽長からはいつも怒られていました。このままでは、近くに控えた演奏で、他のみんなの足を引っ張ることになりかねません。
 そこで、ゴーシュは家にセロを持ち帰り、練習することにしました。鬼気迫る勢いで一心不乱に練習していると、次第に夜も深まり、ゴーシュも弾き疲れ意識が朦朧としてきました。その時、ゴーシュのもとに不思議な客が現れました。
 夜ごと、しかもゴーシュが弾き疲れ、朦朧としているときにゴーシュのもとに奇妙な客が訪れます。
 やがて演奏の日になり・・・・。
 夜ごとに訪れる奇妙な動物とゴーシュのふれあいと、意外な結末が印象的です。


新美南吉さんの作品

 教科書で必ずと言っていいほど出てくる作家ですが、下記2冊はそれぞれ代表絵本が2冊あります。どちらの絵本を選ぶかは好みの問題でしょう。
 紹介済みの絵本としては『でんでんむしのかなしみ』(6)があります。
 ところで、下の2作品もそうですが、新美南吉さんの作品には、なぜか「きつね」がよく登場します。どなたか理由を知っている方がおられれば教えてください。(あと、佐野洋子さんの作品に「ねこ」がよく登場する理由も知っておられる方がおられれば教えてください。)

ごんぎつね
             読み聞かせるなら  7・8才〜
             自分で楽しむには  9・10才〜おとなまで

 ここで、ストーリーを説明するのも恥ずかしいほど多くの方に親しまれている話です。
 いたずらぎつねの「ごん」は、兵十が病気の母親のために捕ったウナギを、ふとしたいたずら心で奪ってしまいます。
 その母親は死んでしまい、罪悪感にかられたごんは、せめてもの罪滅ぼしにと兵十のために様々な恩返しを試みます。
 しかし、その心は伝わることなく、逆に突然の悲しい結末へと向かっていきます。
 淡く温かい色使いが魅力的な黒井健さんの絵本(偕成社)と、叙情的で哀愁漂う箕田源二郎さんの絵本(ポプラ社)が有名です。

手ぶくろを買いに
             読み聞かせるなら  7・8才〜
             自分で楽しむには  9・10才〜おとなまで

 もの悲しく心に残る『ごんぎつね』とは対照的に、こぎつねと人間との交流を描いた心温まる内容の話です。
 初めて雪を見て大はしゃぎし、ボタン色になってしまったこぎつねの手を不憫に思った母ぎつねが、こぎつねの片方の手を人間の手に変え、銅貨を持たせ、一人で手袋を買いに行かせます。
 「いいかい、坊や。必ず人間の手の方を出すんだよ。」と言われたものの、こぎつねは家の明るさに驚き、ついきつねのままの方の手を出してしまいます。
 てぶくろを買いに来たものが子どもではなく、きつねと分かった店主は・・・・。
 新美南吉さんの深い人間洞察が随所に感じられる良作です。
 黒井健さんの絵本(偕成社)と、『こぐまちゃんシリーズ』(7)の若山憲さんの絵本(ポプラ社)が有名です。


昔 話(民 話)

 有名な昔話(民話)は、「絵本」の数が多くなり、ついつい目移りしてしまいます。
(そのため、ランキングの対象にはしていません。)
 しかし、逆に言えば、自分の好きな絵、そして好きな語り口(絵本によって少しずつ異なります)の絵本が選ぶことができるということです。
 今回は特に同じ内容の昔話(民話)で、絵本は多くあるものを選んで紹介しますので、是非読み比べるなりして、自分のお気に入りの「絵本」を探してください。
 尚、題は絵本によって多少異なる場合があります。

さるかに (さるとかに・かにむかし・さるかに合戦)
             読み聞かせるなら  4・5才〜
             自分で楽しむには  5・6才〜

 日本の代表的な昔話ではあるのですが、様々な作者、そして様々な絵を描かれる方が、様々な出版社で出版されているため、「え!?こんなにあるの?」と思うほど、さまざまな「さるかに」があります。
 おむすびを持っていたかにと、柿の種を持っていたさるがそれらを交換します。そして、かにが育て大きく実った柿の実を、さるが横取りし、まだ青い実をかにに投げ、かにを殺してしまいます。
 その仇を討つために、かにの子どもたちが、栗やうんこや臼やハチたちと協力して、さるを懲らしめる、という書くのも申し訳ないくらい有名な話です。(ただし、絵本によって多少内容が異なります。上記内容は松谷みよ子さんの場合です。)
 文では松谷みよ子さん、神沢利子さん、木下順二さんなど。画では赤羽末吉さん、瀬川康男さん、清水崑さん、滝平二郎さんなど、わたしの知っているだけでも(アニメ絵の要約絵本を除いて)5社以上の出版社から出ている作品です。

赤ずきん(あかずきんちゃん)
             読み聞かせるなら  5・6才〜
             自分で楽しむには  6・7才〜

 この作品も、おばあちゃんに届け物をしていく赤ずきんちゃんが、先回りしておばあちゃんを食べてしまったオオカミに襲われてしまう、という有名な作品です。
 赤ずきんと言えば「グリム童話」を思い浮かべる方も多いでしょうが、それでもツヴェルガー画(冨山房)、ワッツ画(岩波書店)がありますし、「グリム童話」でない赤ずきん(樋口淳文、片山健絵、ほるぷ出版など)もあります。
 また、「子どもには残酷」という理由からか、「グリム童話」が元になっていても出版社によって内容も少しずつ違っている時もあります。
 こういった「同じ作品の相違」を読み比べてみるのも楽しみの一つではないかと思います。

おだんごぱん(ぱんはころころ・にげだしたパンケーキなど)
             読み聞かせるなら  4・5才〜
             自分で楽しむには  5・6才〜

 おじいさんとあばあさんが作ったおだんごぱん。「さぁ、食べよう」と思っていたら、ちょっとした隙に「食べられてたまるか!」と、おだんごぱんはころころころころ、逃げ出していきます。
 それからいろんな動物に食べられそうになりますが、おだんごぱんはうまく逃げ回ります。
 ところがずるがしこいきつねに遇ったとき・・・・。
 小気味よい繰り返されるリズムが魅力的な話で、上の『赤ずきん』と異なり、絵本は違っても内容はほとんど変わりません。
 ですが、そのために「画が違うとここまで印象が違う」ということを感じさせてくれ、「絵本」における画の重要性を再認識させてくれます。
 海外では、マーシャ・ブラウン(冨山房)、ワスネツォフ(大日本図書)、ラチョフ(らくだ出版)など、日本でも井上洋介さん、わきたかずさん(ともに福音館書店)など、実にさまざまな『おだんごぱん』が楽しめます。


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